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復職か,退職かの基準は何か?

復職か,退職かの基準は何か?

事例

私は職種を特に限定しないゼネラリストとして会社に勤務して参りました。先般より業務外の傷病により休職していましたが,休職期間の満了が近づいたため,傷病が回復したとして復職を申し出ました。ただ,私は,軽易な業務であれば仕事は出来そうですが,従前の業務は当面は難しいというのが実情です。また,私の担当医が作成してくれた「復職可」とする診断書を提出しました。
しかし,会社は,産業医が復職に疑問を呈していること,私が従前の業務に就けないことを理由に,休職期間満了による退職扱いをすると言っています。
どのように対応すれば良いでしょうか?

不当解雇

回答

傷病休職は,休職期間中に傷病が治癒すれば復職となり,治癒せずに休職期間が満了すれば自然退職又は解雇となります。そこで,復職の要件たる「治癒」が備わったか否かが問題となります。ご相談者のケースでは,職種を特に限定していないゼネラリストとして雇用契約をしていること,軽易な作業であれば仕事ができること,担当医の診断書があること等から「治癒」が備わったといえる可能性があります。会社の産業医の意見は絶対的なものではなく,医学的に「治癒」が備わったか否かが問題となります。ですので,会社の休職期間満了による退職扱いは違法となる可能性があります。



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解説

1 争点について

傷病休職は,休職期間中に傷病が治癒すれば復職となり,治癒せずに休職期間が満了すれば自然退職又は解雇となります。そこで,多くの争いは,復職の要件たる「治癒」が備わったか否か,に関するものとなります。

2 復職が認められるための「治癒」の意味

⑴ 「治癒」とは健康時に行っていた業務を遂行できる能力に戻ること

ほぼ治ったけれども,休職前に行っていた業務を遂行することができないという場合は,「治癒」とは言えないし,復職は権利として認められない可能性があります。

⑵ 復帰当初の業務について配慮が要請される場合がある

但し,休職していた労働者が,休職期間満了時には負担の軽い作業しかできないけれども,2~3ヶ月たてば(回復を待てば)休職前の通常の業務を行うことができる蓋然性がある場合,復職を認めずに退職扱いとしたことが無効となることもあります。 エールフランス事件 東京地判S59.1.27労判423-23 独立行政法人N事件 東京地判H16.3.26労判876-56

3 治癒したか否か判断する際の「通常の業務」とは?

⑴ ゼネラリストの「通常の業務」とは?

「労働者が,職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては,現に就業を命じられた特定の業務について労務提供が十全にはできないとしても,その能力,経験,地位,当該企業の規模・業績,当該企業における労働者の配置・異動の実績及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務提供をすることができ,かつ,その提供を申し出ているならば,なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」(片山組事件 最判H10.4.9労判736-15)。

⑵ スペシャリストの「通常の業務」とは?

職種を特定して採用された労働者(スペシャリスト)は業務が特定されているので,その業務を支障なく遂行できる状態になっているかが基準となります。
ただし,職種変更を予定している場合は注意を要します。
「労働者がその職種を特定して雇用された場合において,その労働者が従前の業務を通常の程度に遂行することができなくなった場合には,原則として,労働契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供,すなわち特定された職種の職務に応じた労務の提供をすることはできない状況にあるものと解される(もっとも,他に現実に配置可能な部署内氏担当できる業務が存在し,会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは,債務の本旨に従った履行の提供が出来ない状況にあるとはいえないものと考えられる)」(カントラ事件 大阪地判H13.11.9労判824-70 大阪高判H14.6.19労判839-47)。

⑶ 「通常の業務」の内容が変化している場合

SEや証券会社のディーラー業務のような時代の最先端を行く業務は,その業務に求められる能力も日々変化しています。ただ,休職前に行っていた業務遂行ができるまでに回復しているのならば,会社としては復職を認めるべきです。そして,その従業員に対して一定期間のトレーニングや研修を行い,現在求められる業務に就けるように支援する必要があるといえます。

4 治癒しているかどうかを最終的に判断するのは誰か?

⑴ 治癒しているかどうかの判断主体は原則として会社

会社が休職を認めたのであるから,休職事由が消滅したか否かも会社が判断するという建前になります。なお,就業規則と「復職の可否は,診断書により決定する」という規定があればそれに従うことになりますが,規定がなければ使用者が判断することになります。
山口赤十字病院 山口地判S41.5.16労民集17-3-637

⑵ 診断書が書かれた経緯には注意が必要

治癒の判断については,医師の判断が非常に重要であり,医師の診断なくして復職の可否を判断をすると,いざ裁判になったときに,裁判所からその点について追求される可能性があります。ただ,診断書に「現場復帰可能」「出社可能」と記載されていても,それが通常の業務を行える健康状態まで回復した(治癒した)ということを意味していないことも多くあります。

⑶ 診断書は重要であるが判断材料の一つにすぎない

実務では,会社は休職期間満了の2週間くらい前に診断書を提出して貰った上で本人と面談し,本当に治癒しているかを,業務を支障なく遂行できるかどうかを確認する必要があります。そして,何か問題があると思ったならば,医師への面談を求め,できれば,その従業員と共に医師を訪ね,十分な話し合いを行うべきです。話し合いのポイントは① 業務内容を十分説明し,その業務が通常程度できるまでに回復しているか否か② 将来的に再発することなく継続的な労務提供を行うことが可能か否かということになります。
なお,労働者が医師への面談を拒絶することは相当ではないと判断されます。
「職務復帰を希望するにあたって,復職の要件である治癒,すなわち,従前の職務を通常の程度行える健康状態に復したかどうかを使用者である債務者が債権者に確認することは当然必要なことであり,しかも,債権者の休職前の勤務状況及び満了日まで達している休職期間を考えると,債務者が,債権者の病状について,その就労の可否の判断の一要素に医師の判断を要求することは,労使間における信義ないし公平の観念に照らし合理的かつ相当な措置である。従って,使用者である債務者は,債権者に対し,医師の診断あるいは医師の意見を聴取することを指示することができるし,債権者としてもこれに応ずる義務があるというべきである」(大建工業事件 大阪地決H15.4.16 労判849-35)

⑷ 治癒しているかどうかの証明は労働者の責任

健康で働くという契約を交わしていながら私傷病で休職したのであり,契約に違反して債務不履行な状態にあるからです。

⑸ 休職期間満了後の個別対応は会社の自由

休職を延長又は当然退職の手続を進めるか否かは,個別的に行ってよいと解されます。

対応方法

1 まずは弁護士に相談!

解雇された又はされそうなあなたが採れる手段は,ケースバイケースですが,直ちに解雇の撤回・復職を求めたり,あなたが解雇されなければもらえたはずの賃金を請求したり,不当解雇による損害賠償を請求したりすること等が挙げられます。
まずは,なるべく早くご相談下さい。相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いものです。
弁護士は,あなたのご事情を伺い,具体的対応策をあなたと一緒に検討し,最善の解決策をアドバイスします。
不当解雇.COMでは,解雇等された方のご相談については,初回30分間を無料で承っております。
あなたのケースでは解雇は有効になるのか否か,具体的な対策として打つべき手は何か,証拠として押さえておくべきものは何か等をアドバイスします。

2 証拠の収集

法的措置をとる場合はもちろん,交渉による解決を目指す場合も,証拠の確保が極めて重要になります。あなたにとって有利な証拠を出来るだけ確保して下さい。

3 会社との交渉

まずは,法的措置を用いず,会社と交渉して,あなたの望む結果(解雇を撤回,復職,未払残業代の支払い,より有利な条件での退職等)が得られるようにします。
会社側の対応は様々ですが,あなたを退職に追い込むために様々な働きかけをする事が多いのが実情です。

4 裁判

会社があなたの要望に応じない場合は,裁判を起こします。具体的には,賃金仮払い仮処分手続,労働審判手続,訴訟手続などがありますが,事案に応じてあなたにもっとも適した手続を選択して,あなたの請求の実現を目指すことになります。

弁護士に依頼した場合

1 弁護士はあなたのパートナーです。

不当解雇され自信を失ったあなたは,家族・友人にも中々相談できず,一人苦しんでいませんか?安心してください。弁護士はあなたの味方となり,親身に話しを聞いて,今後の対応を一緒になって考えます。弁護士はあなたに共感し,あなたと一緒になって戦うパートナーです。

2 継続的な相談・コンサルティング

不当解雇と闘う場合,ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なります。また,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。また,一人で会社と戦うのは不安がつきまとうものです。
弁護士に依頼した場合,初期の段階よりあなたにとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して仕事や生活を送ることができます。

3 あなたに代わって会社に対し請求・交渉をします。

会社側の対応は様々ですが,あなたを退職に追い込むために様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が会社に対し各種の請求を行い,対等な立場で交渉に臨むことは一般的には困難であることが多いといえます。そこで,弁護士は,あなたに代わり,情報収集のお手伝いをしたり,解雇の撤回等を求める通知を出したり,会社と交渉したり致します。弁護士の指導の下で適切な証拠が確保でき,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し交渉することで,あなたにとって有利な結論を,裁判を使わずに勝ち取ることが可能です。

4 あなたに代わって裁判を起こします。

もし,会社があなたの要望に応じない場合は,裁判を起こします。
具体的には,労働審判手続,仮処分手続,訴訟手続などがありますが,事案に応じてあなたにもっとも適した手続を選択して,あなたの請求の早期実現を目指します。
最近では労働審判手続による解決水準が高まっており,かつ,同手続によって2~4か月間で解決を図ることが可能となっています。

費用

こちら

判決事例

片山組事件

最高裁平成10年4月9日 労働判例738号6頁
(事案の概要)
建築工事現場で長年にわたり現場監督業務に従事してきたXが,バセドウ病のため現場作業に従事できないと申し出たところ,Y会社が「自宅治療命令」を発し,復帰までの約4カ月間を欠勤扱いとして,賃金を支給せず,冬期一時金を減額したため,組合委員長であるXが,右業務命令を不当労働行為に当たり無効とし,賃金等の支払いを請求したものである。
(裁判所の判断)
上告人(筆者注:X)は,被上告人(筆者注:Y)に雇用されて以来21年以上にわたり建築工事現場における現場監督業務に従事してきたものであるが,労働契約上その職種や業務内容が現場監督業務に限定されていたとは認定されておらず,また,上告人提出の病状説明書の記載に誇張がみられるとしても,本件自宅治療命令を受けた当時,事務作業に係る労務の提供は可能であり,かつ,その提供を申し出ていたというべきである。そうすると,右事実から直ちに上告人が債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできず,上告人の能力,経験,地位,被上告人の規模,業種,被上告人における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして上告人が配置される現実的可能性があると認められる業務が他にあったかどうかを検討すべきである。

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